第二話 記章 - 幸福指数 ―63点― | Bunshare | Bunshare← 幸福指数 ―63点―第二話 記章
1ヶ月前更新
――67点。
電子音が静かな部屋に響いた。
枕元の端末が淡く光り、液晶には今日の日付と幸福度が表示されている。
1997年4月3日(月)
幸福度 67点
評価:要注意国民
あと二点。
たった二点失えば、俺は非国民になる。
画面を閉じることはできない。
国民幸福法第十二条。
「幸福度は毎朝六時、本人へ通知しなければならない。」
通知を確認しなかった場合でも、幸福度は更新される。
俺は布団から身体を起こした。
カーテンを開ける。
窓の外では、通勤する人々が無言で駅へ向かっていた。
誰も俯かない。
誰も怒らない。
誰も泣かない。
街中に設置された感情解析カメラが、その一瞬の表情すら幸福度へ反映するからだ。
マンションの向かいには巨大な電光掲示板が立っている。
幸福は、支配のためにある。
その文字を見上げながら、人々は今日も笑顔を作る。
笑顔は幸福度を下げない。
無表情はAIに「精神的不安定」と判断される。
そして悲しみは、共同体への悪影響として減点対象となる。
俺は鏡の前に立った。
口角を少しだけ上げる。
三秒。
五秒。
端末が小さく震えた。
表情解析:適正
今日も生き延びられる。
そう思った瞬間、画面の右上に赤い通知が一件表示された。
昨日の行動を再評価しています。
幸福度が、ゆっくりと点滅し始める。
67。
66。
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