第三話 雨上がりのピアノ - 夜明けのシンフォニー | Bunshare← 夜明けのシンフォニー第三話 雨上がりのピアノ
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コンクール本番を三日後に控えた日、七海は指を痛めた。利き手の小指に走る鈍い痛みに、練習中は気づかないふりをしていたが、鍵盤を押す指が明らかに震えていた。
「無理しないで」
陸が七海の手を取った。初めて触れられた手は、思っていたよりも骨ばっていて、少し冷たい。
「本番までに治らなかったら、どうすれば」
「そのときは、僕がテンポを合わせる。七海の指に」
いつもの素っ気なさが噓のように、陸はまっすぐにそう言った。窓の外では、降り続いていた雨がちょうど上がったところだった。濡れたアスファルトが夕日を反射して、音楽室全体がオレンジ色に染まっていく。
七海は痛む指で、もう一度そっと鍵盤に触れた。二人分の音が、静かに重なった。コメント (0)
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