実家にいた頃、卵焼きは母が作るものだった。四角い卵焼き器で、迷いなくくるくると巻いていく手つきを、わたしは何百回と見てきたはずだった。 なのに、いざ自分で作ってみると、卵はフライパンの中でぐずぐずと崩れ、四角いはずの卵焼きは見事に丸くなった。 味は悪くない。でも、形がどうしても母のものと違う。写真を送ると、母から返ってきたのは「初めては、みんなそう」という短い一言だけだった。 丸い卵焼きを弁当箱に詰めながら、わたしはちょっとだけ、実家の台所が恋しくなった。